認知症について

認知症

認知症の有病者数は約460万人、軽度認知障害(MCI)の有病者数は約400万人と推計されています。

認知症とかかりつけ医の役割

身体疾患で通院してくる患者自身は高齢化に伴い認知症状を呈してくる現状があり、それに対する気付きが求められています。
服薬忘れや薬の紛失、指示指導の理解困難等ポイントはいくつもあると思われます。

(1)根本的治療の可能性があるといわれる認知症として

  1. 慢性硬膜下血腫
  2. 正常圧水頭症
  3. 脳炎、甲状腺機能低下症

等があります。

(2)4大認知症の特徴

①アルツハイマー病

アルツハイマー病

潜行性の発症、多くは記憶障害に始まり、生活機能が低下していく。見当識障害(時間や場所が分からなくなる)やアパシー(無気力)、徘徊等の症状があります。

記憶障害が主症状であることが多いですが、周辺症状は人により様々で、アルツハイマー型認知症と診断されていても、レビー小体型認知症や、前頭側頭型認知症の症状が出てくれば、症状に応じた対応や投薬でご本人と家族が穏やかに過ごせる配慮が必要です。

【アルツハイマー型認知症の症状にみられる傾向】

一見明るい様子

病識が薄く、比較的明るい表情をしています。人によっては、おしゃべりです。

作り話をする

もの忘れによる失敗をとりつくろうために、積極的に作り話をするようになる。

趣味や日課への無関心

以前は興味をもっていたことに関心がなくなり、毎日の日課を全然しなくなる。

昼間の徘徊

昼間に徘徊します。足が達者でしっかり歩きますが道に迷います。

もの盗られ妄想

自分が仕舞った場所を忘れて大切なものが見つからなくなり、身近な人を疑う。

直前のことを忘れる

近時の出来事(エピソード記憶)が失われ、事実がすっぽり抜け落ちてしまう。

②脳血管型認知症

脳血管障害の後遺症で認知症に至った状態を、脳血管型認知症と言います。

脳卒中発作により階段状に進行する場合と脳卒中発作との関連がはっきりせず緩徐に進行する場合があります。

脳梗塞や脳出血の危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、大量飲酒等)を有することが多いです。

【脳血管型認知症の症状に見られる傾向】

運動機能障害

尿失禁、足をひきずる、握力がなくなりすぐに箸を落とす、しゃべるとろれつが回らない、身体の片側がマヒするといった症状が起きる。

怒りっぽく表情は暗い

不安や怒りが強く、うつ状態に。夜になると徘徊やせん妄が出て、昼夜逆転を起こすことも。

感情失禁

前頭葉の血流が阻害されて感情の制御ができなくなり、泣きじょうごなどになる。

③レビー小体型認知症

もの忘れや脳の萎縮が比較的少なく、「パーキンソン病」や「うつ病」と思われてしまうこともあります。

【レビー小体型認知症の症状に見られる傾向】

幻視

 子供や小動物が見えるという訴え。

 視線が合わない

 うとうとしていて、相手と目線を合わせない。

 傾眠

 日中寝ていることが多い。

 体の傾き

やや猫背、首は前垂れか後ろに倒れる。体の中心は左右どちらかに傾く。

 緩慢な動作

 体の動きが乏しくなり、動けなくなったりする。

 小刻み歩行

 すり足で動き、転倒が多い。

 寝言で叫ぶ

 レム睡眠行動障害といわれる症状が出て、大声で寝言を言ったり、横に寝ている人を叩いたりする。

 薬物過敏

 風邪薬などが効きすぎる。

④前頭側頭型認知症(ピック病)

もの忘れより、性格の変化や、常識はずれな行動が目立ちます。

前頭側頭葉・変性症

【前頭側頭型認知症(ピック病)の症状にみられる傾向】

不自然な感情

怒りっぽい、無愛想、無口、能面のような無表情など、感情面が不自然になる。

診療時の異常行動

医師の行為をまねたり、診療中に何度も立ち上がったり、不合理な行動を起こす。

常同行動

同じ字を書き続ける、手で膝をこすり続けるなど、同じ行動を繰り返す。

衝動的な食行動

甘いものばかり食べる、他人のおかずを盗る、掻き込むように食べるなどの異常。

万引き

買い物に行って、商品を勝手に持ち去ってしまう。

認知症の予防

認知症の予防が可能であるかという疑問に対して、明確な証拠がないのが現状です。
近年、アルツハイマー型認知症の危険因子として中年期の生活習慣病がクローズアップ
されています。
脳梗塞を起こすと認知症の症状が速くなったり、重くなったりするので脳血管障害を起こさないようにすることが大事です。

高血圧を例にとると、中年期の高血圧が認知症の発症リスクであると報告されています。
後期高齢者における過剰な降圧は身体機能や認知機能を悪化させる可能性があると言われています。

アルツハイマー病は多因子疾患であり、様々な危険因子が関わって発症します。
加齢が最も大きな危険因子ですが次に挙げるのはアルツハイマー病リスクを下げる方法です。

適度な運動

ポイントは適度な運動であることです。
毎日1時間程度のウォーキングをするのが良いとされています。

ただし、無理は絶対にしないこと、怪我は禁物です。

睡眠障害を治す

規則正しい適度な睡眠が取れるよう生活リズムを整え、必要に応じ治療を受けましょう。
睡眠はアルツハイマー病の原因となるアミロイドβの蓄積を抑制するとの事です。

頭部外傷を予防する

適度なアルコールの摂取

大量にアルコールを摂取する習慣は認知症のリスクを高め、適度な量のアルコール摂取は、むしろアルツハイマー病のリスクを下げるという研究報告があります。

動脈硬化を予防する

高脂血症、高血圧、糖尿病の予防治療。
過食をしない。禁煙も重要です。

糖尿病を予防する

糖尿病がアルツハイマー病の発症率を約2倍上昇させることが分かっています。

中年期のメタボリックシンドロームを予防する

中年期におけるメタボリックシンドロームがアルツハイマー病のリスクを上昇させます。適度な運動はメタボリックシンドロームの予防にも効果的です。

性ホルモンの関係

女性は男性よりもアルツハイマー病を発症する率が2倍ほど高いことが分かっています。
女性は男性と違って、閉経後、急激に女性ホルモンが低下します。このことがアルツハイマー病のリスクになるのだと考えられています。

認知症の人との接し方

a)笑顔で接する、褒める

接し方としては怒ったり否定したりしないことです。
笑顔で接すること、認知症の人が出来ることを褒めてあげることが有用です。

b)一人の人間として尊重する

認知症の人にもプライドがあります。プライドを傷つける言葉は避けましょう。

c)失敗を責めない

薬物治療

記憶障害、見当識障害等の中核症状に対してアリセプト、レミニール、リバスチグミンのパッチ製剤あるいはメマリーを使用します。

徘徊、暴力、妄想、幻覚等の周辺症状に対してグラマリール、抑肝散、ウインタミン、セロクエル等を使用します。

患者の周辺症状が陽性か陰性かを見極め、陽性症状が出ている患者は抑制性の薬剤で落ち着かせてから中核症状治療薬を処方することです。
アリセプト、レミニール、リバスチグミンのパッチ製剤は、どちらかと言うと興奮系に属しているので、すでに陽性症状を示している患者に処方すると、
興奮して介護が出来なくなる恐れがあります。メマリーだけは作用機序が異なりアリセプト程の興奮作用は無いようです。